December 27, 2008
712:実用的な経験
何がひっかかるのか。成田空港の門をくぐるときに、ピーッとブザーが鳴って、それ以来。毎日毎日、レンタルビデオ店で、洋服屋で、本屋で。とにかくセキュリティをくぐろうとすると鳴るのである。日本は平和だなと思うのが、こうして世間のブザーを鳴らし続けているのに、チェックされたことは一度もない。鳴らした以上、チェックしていただいて、身の潔白を証明しなければと思い、その場にしばし佇んでみるのだが、誰も来ない。薬局のおばちゃんにいたっては、「すみません」と僕に頭を下げている始末。携帯電話すら持っていない今、詩集くらいしか持ち物がないので、じゃぁきっと、フランスにいる間、何者かによって端末を埋め込まれたのではないか、とサスペンス夢想。本当に暇人。
色々な人に会った。刺激的だったのは、日本社会の普遍的な価値観を再発見したこと。どんどん忘れていく。そういう価値観から、どんどん離れていく自分がいる。そして、前にも増して、人間が好きな自分がいる。僕はとにかく、人間が好きなんだと思う。人間礼賛。かくも不器用、かくも滑稽、かくも悲哀。長期的に時間を捉えたつもりになって、実は瞬間だけを生きていて。あんなに忙(せわ)しないくせに、四畳半で丸半日の三角座り。笑顔に出会って、無言で消えて。いじけたり、胸を張ったり。行き場のない涙を叫んでみたり。ぐふふ人間て。
誰よりも人間でありたいと思う。
生きる哀しさは、それがために実用的な経験だ。
品川の夜空をウォッカで濯(そそ)ぐ。
Posted by kaname : 05:52 AM | コメント (0)